福岡法務局そばの矢野・いなほ司法書士事務所です。
最近、遺言の検認(けんにん)手続の相談が多いので、本日は一般の方にはなかなか馴染みのない検認についてご案内いたします。
1.「検認(けんにん)」って?
遺言を書いた人が亡くなられた後に、遺言を保管をしている方や遺言書を見つけた方は、遺言書をすぐには開けずに、まず「検認の申立て」をする必要があります。これは、家庭裁判所で、相続人の立会いのもとで開封して、遺言書をチェックするのです。このチェックのことを「検認(けんにん)」と言います。遺言書が見つかったのに検認の手続をせずに「遺言書の内容を実行した」場合や、検認の手続をせずに「遺言書を開封した」場合には、5万円以下の過料などのペナルティを負う場合がありますのでご注意ください(民法第1005条)。
なお、検認は相続人に対して遺言があることとその内容を知らせ、その遺言書の形状や中身などを確認して、遺言の偽造や変造を防止するための手続ですので、検認をしたから遺言が有効になるとか、検認をしていないから遺言が無効になるというものでもありませんが、遺言を提出して何かを申請をする場合、(例えば、遺言に基づいて不動産登記をする場合や、銀行での名義変更をする場合)必ずと言っていいほど求められる手続きと言えます。たとえば、検認を経ていない自筆証書遺言を添付情報として相続による所有権移転登記を申請した場合、その申請は却下されます(平成7年12月4日 民三第4343号 回答)。ご注意ください。
2.検認をしなくていい遺言書とは?
「遺言」にはさまざまな種類がありますが、代表的なものとしては、以下の3つの遺言があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
このうち「公正証書遺言」では検認手続は不要です(民法第1004条②)。公正証書遺言の場合には、プロである公証人が作成しますし、要件を満たした証人も立ち会いますので、偽造・変造のおそれが非常に少なく、わざわざ検認は不要ということです。
また、自筆証書遺言であっても、令和2年から始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用して法務局に保管されている遺言も検認は不要です。
遺言の種類ごとの検認手続の要否 | |||
自筆証書遺言 | 秘密証書遺言 | 公正証書遺言 | 自筆証書遺言書保管制度 |
検認必要 | 検認必要 | 検認不要 | 検認不要 |
3.検認の手続の流れ
検認の手続は、遺言を保管している方や発見された方が、遺言を書いた方の最後の住所地の家庭裁判所に申立てをすることで始まります。
手続きの大まかな流れは以下のとおりです。
① 家庭裁判所への申立て
⇓
② 家庭裁判所から相続人への期日の通知
⇓
③ 検認期日
⇓
④ 検認済み証明書のついた遺言の交付
なお、②の通知として、 「検認期日通知書」と「出欠回答書」 という書類が相続人全員に送られますが、検認の期日に全員が出席する必要はありません。申立人は出席が必要ですが、他の相続人の方が欠席されても検認は有効に成立しますし、欠席したからという理由で、欠席した方に不利益が生じるわけではありません(遺言の内容はそのままです)。
4.検認の申立てに必要は書類は?
検認申立てには、
- 申立書
- 遺言を書いた人の出生から死亡までの戸籍謄本等
- 相続人全員の現在の戸籍謄本等
が必要です。さらに家族構成などによって求められる戸籍の内容も変わってきます。
戸籍は本籍のある市区町村役場で取得しますが、転籍を繰り返されている場合には、時間も費用もかかりますのでご注意ください。また、戸籍謄本等は検認が終わった後の手続にも使いますので、申し立ての際には、原本還付の請求をすることをおすすめします。
また、申し立ての際には印紙代として一件につき800円、(相続人の数+α)の枚数の84円切手が必要となります。
福岡県で検認の申立てをする家庭裁判所の管轄は以下をご参考ください。基準は遺言した方の最後の住所地です。
家庭裁判所 | 管轄区域 |
本庁 | 福岡市,筑紫野市,春日市,大野城市,太宰府市,古賀市,糸島市,宗像市,福津市,糟屋郡,那珂川市 |
甘木出張所 | 朝倉市,朝倉郡 |
飯塚支部 | 飯塚市,嘉麻市,嘉穂郡 |
直方支部 | 直方市,宮若市,鞍手郡 |
田川支部 | 田川市,田川郡 |
久留米支部 | 久留米市,小郡市,うきは市,三井郡 |
柳川支部 | 柳川市,大川市,みやま市(旧山門郡瀬高町,旧山門郡山川町),三潴郡 |
大牟田支部 | 大牟田市,みやま市(旧三池郡高田町) |
八女支部 | 八女市,筑後市,八女郡 |
小倉支部 | 北九州市,中間市,遠賀郡 |
行橋支部 | 行橋市,豊前市,京都郡,築上郡 |
5.検認手続の注意点は?
検認手続の申立てから終了までには、およそ1ヵ月くらいかかります。また申し立ての前の戸籍の収集に1~2週間かかる場合もありますし、今年のように新型コロナウイルスの感染拡大の影響で裁判所の事務が滞っている場合さらに時間がかかる可能性もあります。
そうすると、原則として相続開始から3か月以内にしなければならない「相続放棄申し立て」の期限を越えてしまうようなケースも考えられますし、その他の手続にも支障をきたす可能性ががあります。相続手続きにもスピードが求められる場合がありますので、検認はできるだけ早めに取りかかって下さい。
5.司法書士に相談するメリットは?
司法書士は裁判所に提出する書類の作成や、法務局に登記手続の申請を代理する専門家です。当事務所でも遺言書の作成から、亡くなられた後の遺言の執行までさまざまな場面で遺言の手続のサポートをしています。もちろん、検認手続における書類作成だけでなく、その後の相続登記などの登記手続も連続して受任することが可能です。特に遺言の検認などは、一生に一度経験されるかどうかの珍しい手続きですので、お悩みの方がいらっしゃいましたら、当事務所にご相談ください(電話 092-721-0236)。
なお、検認手続の報酬等の目安については、以下のとおりです。
サービスの内容 | 報酬等(印紙代等、実費を除く) |
検認手続サポート | 30,000円~ |
遺言にまつわる各種相談 | 無 料 |