所有者不明農地24% 西日本に目立つ 来年4月、相続登記義務化 農水省

 全国の田畑を合わせた所有者不明農地が全耕地面積の24%を占めることが、農水省の調査で分かった。背景に相続後の未登記や相続放棄があり、西日本に多い。担い手への集約が進まないなど食料安全保障の妨げになっている。政府は来年4月から、宅地を含む全ての土地の相続登記を義務付ける。

<ことば>所有者不明農地
 不動産登記簿を確認しても所有者が分からない農地、もしくは所有者は分かっても所在が不明で、連絡も取れない農地。

 過去の相続も対象となる他、違反者には10万円以下の過料が科されるため、全国の法務局が「早期の登記」を呼びかけている。

 所有者不明農地の調査は初めて2016年に行われ、2回目の今回は21年10月に着手した。全国1702の農業委員会が各農地台帳を基に、相続未登記面積と、住民票の転出などで所有者の生死が確認できない面積を割り出し、農水省経営局が集計・分析した。

 全国に計102万9101ヘクタールあり、全耕地面積に占める割合は前回の20%から24%に上昇した。中部以北の都道県は10~20%台、近畿以西の府県は30~40%台と明らかな“西高東低”を示した。

 高いのは高知43%、鹿児島40%、沖縄36%、京都36%、岡山35%の順。低いのは北海道7%、福島12%、静岡12%、神奈川13%、新潟15%。前回を上回ったのは37道府県、下回ったのは長野や熊本など8県、同率は2都県。所有者不明農地中の遊休農地の割合は6%と、現状では圧倒的に耕作中の農地に多い。

 同省農地政策課によると、相続権者の多くが都市部で働くなど農業に従事していないことが背景にある。相続放棄の他、相続しても登記していないケースが目立ち、長年借り受けて耕作してきた人が高齢で離農した後に、未登記が表面化。登記せずに数十年が過ぎると、権利関係をたどるのは困難で、担い手がいても活用が進まないとの問題を抱える地域が増えている。

 同課の担当者は「基幹的農業従事者が20年で半数に減り、専業の担い手への集約が急務となっている」と語る。

 一方、国土交通省によると、全国の所有者不明土地の面積は九州本島(367万8000ヘクタール)を上回る410万ヘクタールで、国土の1割に及ぶ。周辺環境の悪化に加え、民間取引や公共事業を妨げているとし、農地の集約問題とともに政府が相続登記の義務化に踏み切る要因となった。

(栗田慎一)

日本農業新聞より引用 2023年8月22日 https://www.agrinews.co.jp/news/index/178071

1.全耕作地のうち24%が所有者不明。

 福岡法務局そばの矢野・いなほ司法書士事務所です。本日は日本農業新聞の気になった記事をご紹介します。記事にもありますように、農水省の調査によりますと、日本の全耕作面積のうちの24%、約4分の1の耕作地の所有者が不明とのことです。所有者が不明である土地は、道路の拡張や災害対策で土地を利用する場合に影響しますし、治安上の問題に発展するケースにも発展しかねません。この現象の背景には、農業従事者の減少や地方の人口減少などがありそうですが、直接的な原因としては農地を相続した方が相続を放棄したり、相続したとしても不動産の相続登記をしないままの状態にあることのようです。

2.相続登記をしないままだと問題は複雑に。

 記事にもありますように、相続登記せず何年もそのままにしておくと相続人の方も亡くなったりすることでさらに相続人が増えていき、話し合いをするのも困難な状況になることもあります。もちろん、相続人の調査のための費用も増えていきますから、手続きのための費用も、労力も、時間も増えていくことになります。

 さらに、おじいさんやひいおじいさんの代の登記が残っている場合には、古い時代の戸籍をさかのぼらなければならなくなります。古い時代の戸籍は手書きのものですから、判読するのも大変な戸籍が少なからず存在します。相続登記を放置していると問題が複雑化しやすいので、できるだけ早めに手続きをすることをおすすめいたします。

3.ご実家の不動産の名義はどうなっていますか?

 コロナ禍の影響もあるでしょうが、ご実家に帰省をする機会が減ったり親族同士の関係が疎遠になってしまったせいで、相続の話し合いをするとか、相続登記について連絡を取り合うというような機会を失っている方もいらっしゃると思います。ご実家の不動産の名義が誰のものになっているのか?今一度確認してみてはいかがでしょうか?どのような不動産を所有しているのかわからないという場合には、役所で名寄帳を取り寄せたり、法務局で登記事項証明書(謄本)を取得して現在の登記の記録を確認することも有効でしょう。

4.令和6年4月から相続登記は義務化されます。

 2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されます。正当な理由がないにもかかわらず相続登記を3年間放置している場合には、10万円以下の過料が科されることがあります。この過料は、今まで相続登記をしていなかった方も対象になりますのでご注意ください。また、令和5年4月からは、「相続土地国庫帰属制度」も始まり、所有者不明土地の問題を解消する流れが本格化してきています。

5.相続登記に関するご相談は司法書士に。

 司法書士は法律で定められた不動産登記のエキスパートです。相続登記の義務化や相続土地国庫帰属制度などの新しい制度にも対応しております。相続登記だけでなく、不動産の名義の調査であったり、相続人の調査、ご自身の相続への備えなどのサポートも可能です。また、当事務所では弁護士や税理士、土地家屋調査士等の他士業との連携する体制も整っております。県外の物件についても対応可能ですので、遠方の不動産についての悩み事などについても、矢野・いなほ司法書士事務所(電話:092-721-0236)までご連絡ください。

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