1.法務局からの「通知書」が来た。

法務局から送られる通知書

 福岡法務局そばの矢野・いなほ司法書士事務所です。

 本日は、令和2年の10月15日付で、各法務局から「休眠会社」または「休眠一般法人」に対して送付された「通知書」についてご案内します。この通知書は一定の期間に商業登記をしていなかった法人などに対して送付されています。

 この「通知書」の文面としては、以下のようなものです。

通 知 書

 貴社(貴法人)は、令和〇〇年〇〇月〇〇日現在において最後の登記をした後12年(又は5年)を経過していますが、同日、会社法第427条(又は一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第149条若しくは第203条の規定に基づく法務大臣の公告(以下の要旨参照)をされたので(以下省略)

 この通知がなされた法人等は以下の条件に当てはまります。

  • 最後の登記をしてから12年を経過している株式会社 (「休眠会社」)
  • 最後の登記をしてから5年を経過している一般社団法人若しくは一般財団法人 (「休眠一般法人」)

 通知を受けた会社や法人は令和2年12月15日(火)までに、この通知書にある届出をしなければ、12月16日(水)付で、登記官の職権で解散の登記をされてしまいます。

2.何で通知が来たの?

 会社の取締役の任期は、 選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなっています (会社法第332条1項) 。また、株式の譲渡制限の定めがある会社では任期を10年まで伸ばすことが可能です (会社法332条2項 )。

 一方、一般社団法人や一般財団法人の理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時までで、2年以上に伸長することはできません(一般社団法人及び一般財団法人に関する法律第66条)。

 たとえ同じ方が役員を続投する(重任する)としても、任期が満了すれば役員の変更登記をする必要があります。最長の場合でも、株式会社なら10年に一度、一般社団法人や一般財団法人ならば2年に1度は登記が必要なはずです。そこで、法務省は、株式会社なら12年、一般社団法人や一般財団法人の場合には5年以上登記をしていない法人等に通知をして、法人の実態について届出を求めるようにしています。実態のないペーパーカンパニーのような法人の登記が放置されていると、登記制度の信頼を損ない、犯罪の温床にもなりかねないという理由からです。

 この通知は、平成26年から毎年されるようになりましたが、昨年令和元年の作業では、株式会社では32,711社、一般社団法人・一般財団法人では1,366法人が解散したとみなされ、解散登記がなされたそうです。

参照:休眠会社・休眠一般法人の整理作業について

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00082.html

 旧商法の時代、株式会社の取締役の任期は原則として約2年で、ほとんどの株式会社が2年に一度、変更登記を申請していました。ところが、平成18年に新会社法が施行されて、取締役の任期が10年まで伸長できるようになってからは、変更登記をするという習慣が全くない会社が増えまして、10年以上会社の登記を放置してしまう、というケースが近年は増加していると感じています。

参照:令和2年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00083.html

3.解散を避ける方法は?

 この通知書を12月15日まで放置していると、解散の登記を入れられてしまいますので、「まだ事業を廃止していない」旨の届出をすることで、解散登記(みなし解散)を回避できます。この届出は、法務局に持参しても郵送しても構いません。また、司法書士などの代理人に委任することも可能です。

「事業を廃止していない旨の届出」には、以下の事項を記載して、法人の実印(法務局に届けた印鑑)の押印が必要です。

  • 本店又は主たる事務所
  • 商号又は名称
  • 代表者の資格
  • 代表者の氏名
  • 代表者の住所

また、「事業を廃止していない旨の届出」をしなくとも、直接、役員変更登記などを申請することによっても解散登記を回避できます。

4.解散するとどうなるの?

  会社が解散をしても会社がすぐに消滅するわけではありませんが、解散をするとその会社は清算手続きに入ります。会社がそれまでのような営業活動することや配当をすることなどはできなくなります。清算手続きが完了して、清算結了すると法人格は消滅します。

 なお、解散の登記を避けられなかったとしても、解散登記から3年以内に株主総会で継続の決議をすることよって、解散状態から通常の状態にもどることも可能です。

5.登記をしていなかったペナルティは?

 会社法上、会社登記事項に変更が生じた場合、2週間以内に変更登記を申請しなければならないと定められています(会社法第915条1項)。この期限を守らなかった場合、過料の制裁を受ける可能性があります(会社法第976条)。検察庁から「納付告知書」が会社の代表者個人の住所宛てに文書が送付され、個人に対して過料が課されます。過料は刑罰ではないので前科は付きませんが、代表者あてであり、会社の経費・損金にならない点に注意が必要です。

 今回の通知が来た場合には、最低でも2年以上の遅滞となりますので、数万円の支払いは避けられないでしょう。もちろん大きな負担ですが、本来なら登記して支払うべきだった費用と比べれば、異常に高い額とは言えないかも知れません。

6.変更登記は司法書士へ。

 会社や法人を存続させるのであるならば、いずれにしても変更登記は必要です。役員変更登記をする場合には、登録免許税として以下の費用が必要です。

変更登記の内容 登録免許税
株式会社の役員変更 (資本金が1億円未満)1万円
  (資本金が1億円以上)3万円
一般社団・財団法人の役員役員変更 一律1万円

 ただし、長期間登記をしていない状況ですと、資料等も散逸していて登記のための必要書類の作成も、個人でされるのは難しい場合が多いです。まずは、お近くの法務局などで登記簿謄本を取得して、法人の登記の現状を確認されるのが先決ですが、お忙しい場合や、ご自分で手続きをすることに不安な場合などには、登記の専門職である司法書士にご相談ください。

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