1.電子証明書って?
福岡法務局そばの矢野・いなほ司法書士事務所です。
今回は、最近お問い合わせの多い、法務局で取得する法人の電子証明書についてご案内します。
近年、さまざまな申請手続きがパソコンやスマホからでもできるようになり、さらに、新型コロナウイルスの感染拡大防止のためにもオンライン化の加速が求められています。
オンライン申請では、紙の申請に比べて費用が割引になったり、申請する側の手間が減るだけでなく、提出までに移動する労力や時間を節約できたり、混雑をする窓口に並んで待たされたりするようなことを避けることもできます。
しかし、オンラインでの申請の場合、誰もが簡単に申請できて便利ですが、同時に、本人でもない人が本人になりすまして、勝手に申請をしてしまう危険性も高いものです。 また、紙で申請する場合ならば、本人を確認する場合に印鑑証明書などを提出して証明することがありますが、オンラインではそもそもハンコを押しません。 では、オンラインでの申請がが本人のものであるという証明はどうすればいいでしょうか?この場合の解決策のひとつが電子証明書です。オンライン申請では特別な手続きで発行した「電子証明書」を添付してもらうことで、本人の申請であることを担保します。
この「電子証明書」というと、マイナンバーを使ったり、他の企業が発行する個人向けの電子証明書などの種類がありますが、法務局では「法人の代表者向けの電子証明書(商業登記電子証明書)」を発行しています。
2.どんな手続きに使えるの?
法務局で発行される電子証明書は、さまざまな場面で使えます。
たとえば、以下のような手続きをオンラインでする場合などに求められることもあるでしょう。
- 法務局でのオンライン申請システム(不動産、商業登記、供託、成年後見、電子公証、法人の印鑑証明書のオンライン請求など)
- e-Tax(国税電子申告・納税システム)
- eLTAX(地方税電子申告)
- 社会保険・労働保険関係手続
- 特許のインターネット出願
- 自動車保有関係手続のワンストップサービス
- 総務省 電波利用 電子申請・届出システム
- 防衛装備庁 電子入札・開札システム
- オンラインによる支払督促手続(督促手続オンラインシステム)
- 府省共通の電子調達システム(GEPS)
- 電子自治体における各種の申請・届出システム
3.手数料はいくらかかるの?
法務局で発行される電子証明書の手数料(印紙代)は、有効期限によって変わります。最短の3ヶ月のもので1,300円、それから3か月ごとに加算されていき、最長の27ヶ月だと9,300円です。なお、電子証明書には更新の手続はないので、証明期間が過ぎた電子証明書は失効してしまいます。失効後も使用を続けたい場合には、新しい電子証明書を発行する必要があります。
証明期間 | 3か月 | 6か月 | 9か月 | 12か月 | 15か月 | 18か月 | 21か月 | 24か月 | 27か月 |
発行手数料 | 1,300円 | 2,300円 | 3,300円 | 4,300円 | 5,300円 | 6,300円 | 7,300円 | 8,300円 | 9,300円 |
4.どうやって取得するの?
法務局で発行される電子証明書は大まかにいうと、
① 法務省のホームページから専用のソフトウェアをダウンロード
② ソフトウエアを活用して 「鍵ペアファイル」と「証明書発行申請ファイル」 を作成
③ ②のファイルを法務局に提出
④ 法務局で取得したシリアルナンバーを使って電子証明書をダウンロード
という流れです。
法人の総務担当の方がお一人で電子証明書を取得される場合もありますが、内容が特殊であるため、苦労される方も多いようです。申請を受け付けられずに何度も法務局を往復したり、必要なファイルが作成できずに提出期限に間に合わなくなったというケースもあります。他にも、導入当初は自社で電子証明書を取得されていても、手続きが煩雑なので再取得の時には当事務所に依頼されるという法人の方もいらっしゃいます。
詳しくは以下のページをご参考ください。
参照:法務省 電子証明書取得のご案内
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00028.html
5.電子証明書の注意点は?
オンラインで申請をする場合に便利な電子証明書ですが、ご注意いただきたい点がいくつかあります。
まずは、セキュリティ上の問題です。電子証明書は、オンライン上の法人の印鑑証明書と同様のものです。他人に容易にコピーをされたり、パスワードを見られるようなことのないように、厳重に管理をしてください。万一、悪用される危険性が生じた場合には、電子証明書を休止させることもできます。
また、電子証明書は登録されている情報について変更登記がされると、たとえ証明期間が残っていても失効してしまいます。たとえば、電子証明書を発行した後に以下の登記を申請したときなどです。電子証明書の証明期間中に登記を変更する予定がある法人の場合ですと、証明期間を短くするなどの対応が必要になります。
- 商号(名称)の変更
- 本店,主たる事務所移転
- 代表者の変更(重任した場合を除く。)
- 代表者の代表権の制限
なお、令和2年3月9日より法務局の取り扱いが変わり、このような失効が生じた後に、一定の条件で再発行の申請が可能になりました(手続きについては各法務局に確認してください)。
6.印鑑カードの提出は必要?
以前は、電子証明書の発行の申請に際して、法人の「印鑑カードの提出」が求められていましたが、 令和2年3月9日より法務局の取り扱いが変わりまして、提出は不要となりました。
7.司法書士に依頼すると報酬は?
当事務所に電子証明書の申請代理をご依頼される場合、おおよそ以下のような報酬を請求いたします。
サービスの内容 |
報酬(印紙代、通信費等を除く) |
電子証明書の発行(初回) |
10,000円~ |
電子証明書の発行(2回目以降) |
8,000円~ |
また、期間としてはご依頼から1週間ほどいただいていますが、条件さえそろっていれば、1~3日以内に発行することも可能です。
その他、ご質問などがございましたらお気軽にご連絡ください。